死後事務委任契約とは
死後事務委任契約とは、葬儀や埋葬に関する事務を委託する契約のことです。
委任者が、受任者に対し、自己の死後の葬儀や埋葬に関する事務についての代理権を付与して、 自己の死後の事務を委託する委任契約を「死後事務委任契約」といいます。
委任契約は原則として委任者の死亡によって終了しますが、委任契約の当事者である委任者と受任者は、「委任者の死亡によっても委任契約を終了させない旨の合意」をすることができますので、委任者は受任者に対して短期的な死後の事務を委任することができます。
晩年の身上監護と財産管理を万全なものとしたうえで、死後の相続、相続財産の管理、または処分および祭祀の承継に紛争を生じないようにするために、 財産管理委任契約、任意後見契約、見守り契約の契約をするとともに、遺言をする方法が考えられます。
※「見守り契約」とは、任意後見契約が効力を生ずるまでの間、受任者が本人の生活状況及び健康状況を見守るという契約です。
遺言で葬儀や法要のやり方を指定することは、それらが法定の遺言事項にあたらないため、葬儀や法要等に関する遺言は法律上の遺言事項ではなく、遺言者の希望の表明として遺産の分配等に関する条項に続く付帯事項としてなされることになります。
最後の自己表現として葬儀のやり方を具体的に指定したり、散骨等を埋葬の方式として指定したりする場合には、遺言者が生前に遺される方々に対して遺言者の希望をお伝えし、実際に葬送を行うことになる人々との話し合いや準備をしておくことが大切です。
遺言では、遺言者の希望する葬儀が確実に行われるようにするために、祭祀の主宰者を指定することも必要になりますし、遺言執行者を指定して、その遺言執行者との死後事務委任契約を締結する方法も考えられます。
契約内容の注意点
費用の負担について明確にしておく必要があります。
任意後見人・成年後見人等は、ご本人が死亡した時点でその職務が終了します。
任意後見契約、成年後見のみの場合では、死後の事務を行うための財産的裏付けがなく、葬儀費用等の支払いを行うことができなくなります。
遺言で祭祀の主宰者に、「遺言者の葬儀費用に充てるために、金○○円を預託してあり、それを使用して下さい」と指定することも可能です。
事前のご本人がご希望される内容にて、その費用分をある程度明確にし、その内容分の預託金として預けたとしても、相続財産に混在してしまう危険性や、預託が長期にわたる場合には、不正が発生する危険性があることを事前にご理解して頂く必要があります。
具体的な葬儀内容を生前に予約される方が増えていますが、葬儀会社との間の生前予約の反響は大きいです。
また、80歳まで契約可能な保険を活用される方も増えています。
生前予約された分の保障を保険とお考えのようです。
亡くなった後の事務手続き
- 委任者の生前に発生した債務の弁済
- 委任者の死後の葬儀、埋葬もしくは永代供養に関する債務の弁済
- 賃借建物の明け渡し、敷金もしくは入居一時金等の受領
- 親族関係者への連絡
- 家財道具や生活用品の処分に関する事務
それぞれを必要に応じて行うことも可能ですが、任意後見契約等は段階的な利用方法が考えられます。
「任意後見契約」「見守り契約」「死後事務委任契約」「公正証書遺言」を含めて4点セットという考えで検討されることをお薦め致します。
任意後見制度は、ご本人が契約の締結に必要な判断能力がある時に、将来ご自分の判断能力が不十分な状態になった場合に備えてあらかじめ結んでおく契約です。
「ご自分の後見の在り方をご自分の意思で決定する」自己決定の最大限度の尊重がその理念です。それと併用する契約や証書を知ることで、任意後見契約そのものが理解しやすくなります。