3.遺言に関する制約

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(1)方式面の制約

法は,遺言に関し,厳格な方式主義をとっており,法律に定められた方式に従って作られていない遺言は無効です(民法960条)。下記の3方式がありますが,特別の事情のなければ,イの公正証書遺言をお勧めします。

ア 自筆証書遺言(民法968条)

(ア) 方式

遺言者が,①全文,②日付,③氏名を自署し,④押印して作成します。

(イ) 利点

  • 用紙とペンと印鑑があれば作成可能で,費用がかからない。
  • 遺言者単独で作成可能なため,遺言内容を完全に秘密にすることができる。

(ウ) 欠点

  • 専門家の関与なく作成可能なため,方式に不備があり,無効になるおそれがある。
  • 同じく,専門家の関与がないため,遺言内容に問題があるおそれがある。
  • 死後,遺言書が認識されない,あるいは,破棄・隠匿されるおそれがある。
  • 死後,家庭裁判所での検認が必要で,手間がかかる。

イ 公正証書遺言

(ア) 方式

遺言者が,証人2人以上の立会いのもとで,公証人に対して口頭で遺言の趣旨を伝えることで,公証人が遺言内容を筆記して作成します。

より細かい作成手順が法定されていますが,作成する際には,専門家である公証人がきちんと作成してくれます。また,字が書けない,口がきけない,耳が聞こえない,という場合でも作成できます。

(イ) 利点

  • 専門家である公証人が関与するため,方式不備での無効のおそれがない。
  • 同じく,公証人が関与するため,内容面でも助言を受けられる。
  • 遺言書は公証人役場で保管され,死後,検索による発見が容易であり相続人に認識されやすく,また,破棄・隠匿のおそれがない。
  • 死後,家庭裁判所での検認が不要。

(ウ) 欠点

  • 公正証書を作成するための費用がかかる。
  • 公証人,証人2人の関与は必須で,遺言者単独では作成できない。

ウ 秘密証書遺言

(ア) 方式

遺言者が①署名,②押印した証書(署名以外は自筆でなくても良い)を,③封に入れて上記②の印と同じ印鑑で封印します。その封書を公証人と証人2人の前に提出して手続することによって作成します。

より細かい作成手順が法定されていますが,作成する際には,専門家である公証人がきちんと作成してくれます。

(イ) 利点

  • 遺言書の存在を明らかにしつつ,その内容を完全に秘密にすることができる。

(ウ) 欠点

  • 封印までは遺言者単独で可能なため,方式不備で無効のおそれがある。
  • 同じく,遺言内容に問題があるおそれがある。
  • 死後,家庭裁判所での検認が必要で,手間がかかる。

(2)内容面の制約

遺言で決められる内容も法律で限定されていますので,それ以外の事項について遺言書に書いたとしても法的には意味のない記載ということになりますので注意 が必要です。

ただ,そのような法的には意味のない記載でも,例えば,複数の子のうちの1人に全部相続させるような遺言内容にする場合に,そのような内容に した理由・動機を説明するなど遺言者本人の言葉で他の子らに理解を求める記載があれば,共同相続人間の紛争予防に役立つこともあります。 

法定の遺言事項としては,

  • 認知(民法781条2項)
  • 推定相続人の排除・排除の取消(同893条,894条2項)
  • 祭祀主宰者の指定(民法897条1項ただし書)
  • 相続分の指定(同902条)
  • 特別受益の持戻し免除(同903条3項)
  • 遺産分割方法の指定(同908条)
  • 遺贈(同964条)
  • 遺言執行者の指定(同1006条)
  • 遺留分減殺方法の指定(同1034条ただし書)
  • 信託の設定(信託法3条2号)
  • 生命保険金受取人の変更(保険法44条1項)

などがあります。

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4.作成時の注意など

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