遺言書に関わる相続問題を解決する方法

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更新日:2023年09月26日

 遺産相続の仕方は遺言書の有無によって大きく変わってきます。遺言書が有れば、原則、その内容に従い相続手続を進めていくことができますが、無ければ、相続人の間で遺産分割を行うことになります。遺言書があれば、相続手続が簡便になることから、遺言書を書くことが相続対策の筆頭として挙げられることは多いです。ただし、遺言書が有りさえすれば問題が起きないかと言えば、そうでもありません。
 ここでは、相続をするに当たり、遺言書が有った場合と無かった場合のそれぞれについて、どの様な問題が起こるのか、また、その問題はどの様に解決することができるのかを見ていきましょう。

目次

遺言書が「有る」場合に起きる問題と解決方法

 遺言書には、法律で定められた要式があり、これらを備えていない遺言書は法的に無効となります。法的に有効な遺言書の条件については、コラム「遺言書を書く前に知っておきたいこと!遺言の基礎知識」をご参照いただくとして、ここでは遺言書が有ったにも関わらず、遺言書通りの相続が行えない、といった問題が生じるケースについて説明します。

①遺言書が無効

 前述の通り、遺言書の記載内容が法律上の要件を満たしていなければ無効になります。これは、専門家の助けを借りなかった自筆証書遺言では特に起こり得る問題です。遺言書が無効であれば、遺言書が無い場合と同様、相続人全員で遺産分割協議を行うことになります。
 一方、遺言書が要式上は有効であるにも関わらず、その効力が争われるケースには、故人が遺言書を書いた当時に遺言能力(判断能力)があったかというものがあります。遺言の有効性を争うには、遺言の内容が無効であると主張する相続人が裁判所に遺言無効確認請求訴訟などを提起し、遺言能力が無かったことを証明しなくてはなりません。遺言能力が無かったことを証明する為には、当時の遺言者の診断書や、当時の介護や医療の記録や関係者の証言など多くの物が必要になります。遺言書を無効にできる可能性があるのかといった判断も含め、早い段階で弁護士に相談されることをお勧めします。
 たとえ、故人に遺言能力が有ったとしても、残された遺言書の押印が実印ではなく、加えて本人の自筆であるかどうか疑わしい場合には、遺言の有効性を主張する相続人が、本人の自筆であることを証明しなくてはなりません。その証明には筆跡鑑定と状況証拠(本人が当時、字を書ける状態にあったか)が使われます。こちらも専門性の高い判断が必要となるので、早い段階で弁護士に相談されることをお勧めします。
 また、遺言書の財産目録に記された内容が不正確であれば、要式ならびに本人の遺言能力の点をクリアしていたとしても、遺言書が機能しないので、相続人全員で遺産分割協議を行うことになります。

②遺留分が侵害されている

 有効な遺言書であっても、その内容にしたがって遺産分割すると一部の法定相続人の遺留分を侵害する場合、遺言書通りの遺産分割ができない場合があります。
遺留分というのは故人の兄弟姉妹以外の法定相続人に最低限の相続割合として民法に定められています。遺留分について詳しくは、コラム「遺留分侵害額請求について知ろう!遺留分侵害額請求のメリットとは?」をご参照下さい。
 この遺留分を侵害された相続人はこれを侵害したことになる相続人等に対して、侵害額相当の金銭を請求できます。もちろん、遺留分を侵害するような遺産の分配が遺言書に指定されていたとしても、相続人全員がその遺産の分配に異議ないのであれば問題ありません。
 遺留分侵害額請求は民法に定められた権利なので、相続の開始(および減殺すべき贈与または遺贈があったこと)を知った時から1年以内であれば行使できます。行使するには相手にその意思を伝えれば足りますが、相手がこれに応じない場合は、専門家に相談することをお勧めします。

③遺言書の財産目録の記載内容と実際の遺産が異なる

 遺言書は、前もって用意しておくものですから、遺言書を作成してから遺言者が亡くなるまでの間にはどうしても時間差が生じます。その間、財産の変動が無いとも限りません。
遺言書に記載の無い遺産があった場合、これについては法定相続分で分割(場合に寄っては遺産分割協議)をすれば足ります。
 一方、相続発生時に存在しないのに遺言書には記載がある場合はやっかいです。一般的にはその存在しない財産に関する部分は無効となります。たとえば、不動産をAに預金を全てBに相続させる内容の遺言書があったとします。相続発生時にAが相続するはずだった不動産は生前に売却済みで存在せず、Bが相続する預金が不動産を売却した分、増えていたとしても、この遺言書の内容では、Aは何も相続できず、Bが多額の預金を相続することになってしまいます。ABが良好な関係で、Bが遺言書に依らず遺産分割協議を行うことに同意すれば問題は解決したのも同然でしょうが、Bが同意しなければ、AはBに遺留分侵害額請求をおこなわなければならなくなります。こういった場合には兎にも角にも弁護士に相談された方が良いでしょう。

遺言書が「無い」場合に起きる問題と解決の流れ

①そもそも遺言書が無い

 遺産分割を行う際に遺言書が無い場合、相続人全員で遺産分割のための協議をすることになります。
詳しくはコラム「遺産分割で知っておきたいトラブルの対処法について知ろう!」をご参照下さい。

②遺産分割時には無かった遺言書が後から見つかった

 遺産分割協議による遺産の分配と異なる内容の遺言書がのちに見つかった場合は遺言にしたがって相続をやり直す必要があります。
 こちらもコラム「遺産分割で知っておきたいトラブルの対処法について知ろう!」で説明してありますので、ご参照下さい。

まとめ

 遺言書は相続発生後の手続の手間等を考えた場合、残しておけば大変役に立つ相続対策の一つではありますが、正しく残せなければ当然、その恩恵には預かれません。むしろ、遺言書が有ったばかりに相続人の間にトラブルを巻き起こす火種にだってなりかねません。
 法的に有効かつ遺産分割をする上で効果的な遺言書を残す為には、遺言書が巻き起こしかねないトラブルを踏まえて、遺言書の草案を作ったら専門家にチェックしてもらってはいかがでしょうか。

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