相続調査の段階で生じた相続問題を解決する方法

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更新日:2021年06月29日

 遺産を相続するためには、最初に相続調査を行うことになります。相続調査から実際に遺産を相続するまでの流れについては、コラム「遺産相続の方法とは?遺産相続の流れについて知ろう!(その2)」をご参照下さい。ここでは、相続調査の段階で生じうる問題とその解決方法について説明していきます。

目次

相続調査での問題とその解決方法

 遺産分割を始めるにあたっては、まず相続調査で、法定相続人と遺産の確定が必要になります。遺言書があれば、その内容に基づいて相続手続をおこなうことになりますが、たとえ遺言書に遺産分割の仕方が子細に指定されていたとしても、遺言書に記載されていない財産があれば遺産分割協議をしなければなりません。なお、遺言書があったとしても相続人全員(受遺者がいれば受遺者も含める。)が遺言書と異なる遺産分割を望んだ場合は、遺言書が無かった場合と同じ手順で遺産分割を進めることが可能です。  誰が相続人で、どの様な遺産がどれだけあるのか、といった相続調査は、遺言書の有無に関わらず最初に行う必要のある手続です。  具体的な調査の仕方については、コラム「遺産相続の方法とは?遺産相続の流れについて知ろう!(その2)」をご参照ください。

①相続人に関する問題と解決法

 相続人を確定する段階で起こり得る問題は、相続人を確定できたものの居所がわからない、相続人に連絡しても応答が無い、家族が知らない相続人の存在が明らかになったといったことが挙げられます。 有効な遺言書があれば、相続手続は可能なので、仮に連絡の取れない相続人がいたとしても問題にはなりません。問題は、遺言書が無い場合に深刻です。

連絡の取れない相続人

 疎遠な相続人にも何らかの方法で接触を試みることになります。まず、戸籍の附票からわかる住所地に手紙を出してみます。連絡しても応答が無い場合、家庭裁判所で遺産分割調停をすることになるので、話し合いで解決した方が多くの手間が省けることを知らせて協力を求めます。当事者同士が連絡を取ることに何か感情的な弊害があるようでしたら、弁護士を代理人として連絡するのも一案です。

生死不明の相続人

 連絡しようにも生死不明の場合には、家庭裁判所に不在者財産管理人を選任してもらい、本人に代わって遺産分割協議に参加してもらいます。生死不明の期間が7年以上の場合は、失踪宣告という手続を取ることもできます。

相続人の範囲

 ここまでは、誰が相続人はハッキリしている時に起きる問題ですが、そもそも相続人であるか否かが疑わしい場合、例えば離婚や認知が無効である可能性がある場合は、訴訟によって解決することもありますので、専門家に相談されてみて下さい。

②相続財産に関する問題と解決法

 遺産分割するべき相続財産を確定前後の段階で起こり得る問題は、一部の相続人に特別受益があった、特定の相続人が故人の財産を隠しているのではないかと疑われる、不動産の評価額に疑問がある、といったことが挙げられます。

特別受益

 特別受益というのは、複数いる相続続人の内、一部の相続人だけが故人(被相続人)から受けた利益のことです。民法上、特別受益の対象になるのは、①遺贈、②結婚または養子縁組のための贈与、③生計の資本として受けた贈与、とされています。①は遺言書に明記された相続が始まってからの贈与ですから、その範囲は明らかです。②は、例えば贈与者の資産および生活状況に照らし多額と認められる持参金・支度金が特別受益とされ、結納金や挙式・披露宴の費用は特別受益にはならないとされています。③は、居住用や事業用の宅地など生計の資本となる物を提供した場合に特別受益とされ、学資などは他の共同相続人と比べて明らかに程度が異なる場合以外は特別受益とはされません。これらに照らして、どこまでが特別受益に相当するかを判断していくことになりますが、遺産分割のための話し合いの場面では、感情的になって客観的判断による話し合いができなくなることも少なくありません。  当事者同士での話し合いで決着できなければ、家庭裁判所で遺産分割調停を申立て、第三者を交えて話し合いを前に進めることにもなります。この段階で特別受益を主張するためには証拠が必要不可欠です。不動産の場合、登記名義が変更されていれば所有権が移転したことは明らかですが無償であったかは登記のみからは判断ができません。金銭の場合、故人の口座から相続人となった人への口座へ振り込まれているなどの記録があれば良いのですが、現金の授受ですと証明が難しくなってしまいます。

生前の故人を世話していた相続人が財産の全容を明らかにしない

 生前に故人の世話をしていたり、それに伴い、故人の財産を管理していたりした相続人の一人が、いざ相続が始まった時に「故人は生前に財産を使い果たしていて、相続で分割するほどの財産は無い」と言い張ることもあります。これに対し、いくら何でも全く無いこともないだろうし、無いなら無いでそれを示して欲しいと思うのが、他の相続人の心境でしょう。遺産に不動産があったり、遺産が相続税の申告が必要な額に達していたりすれば、誰の目にも遺産分割協議が必要なことは明らかですが、相続税の控除額の範囲内での現預金であれば、こういったことも言いおおせると思ってしまうのかもしれません。他の相続人が故人の財産内容を知らない場合には、それだけ生前の故人の生活に関心が無かった可能性もありますし、一人、世話をし続けた相続人にしてみれば、自分が報われて然るべき、とも思えるのかもしれません。  とはいえ、遺産分割協議は相続人全員で行わなければなりませんし、他の相続人がこの相続人を労い、遺産分割において譲歩できたら理想的なのでしょうが、中には、故人の厚意に甘えて生計を共にしていただけというケースも無いわけではありません。  こういった場合、故人の生活圏にある金融機関に照会し残高証明書や入出金履歴を取り寄せることができます。金融機関に対するこの様な開示請求は相続人単独でも可能です。

不動産の評価額

 不動産の価格は一物三価とも四価とも五価とも言われ、同じ不動産に対し異なる価格が3~5つはあるとされています。この様に複数の算定価格があるのは、算定の基準とする物が異なるからで、この基準には地価公示・地価調査、路線価、固定資産税評価額、時価(実勢価格)などがあります。  遺産分割をする時に、遺産の中で大きな割合を占めがちな不動産の価格は、他の遺産の分割方法に大きな影響を与えます。相続税の計算をするときには、実勢価格の8割程度を目安とする評価額を使いますので、相続で不動産を取得する予定の相続人はこの評価額を主張するでしょう。しかし、他の相続人にしてみれば、不動産の評価額が下がれば自分達が受け取ることのできる遺産の額が減ることになります。不動産の価格について、折り合いが付かなければ、家庭裁判所での調停や審判に頼ることにもなります。裁判所は相続人間で評価額の合意ができない場合、不動産については時価で判断することとなります。不動産業者の査定書や不動産鑑定士による鑑定書が相続人から提出される場合もありますが、その内容に疑義があれば裁判所において鑑定を行うこともあります。鑑定の対象となる不動産や条件によって異なりますが数十万円からの費用がかかります。評価額で合意できないと時間と費用がかかります。どこまで争うかは一考の余地があるかも知れません。

解決のためのヒント

 相続手続には、期限があるものも多々ありますし、当事者同士の話し合いで落としどころが見つかる見込みがあれば良いですが、その様な望みが無い場合には、早い段階で専門家に相談することをお勧めします。  特に、法定相続人の範囲、相続財産の範囲に関して争いが生じている場合には、最終手段として訴訟提起も視野に入ってきますから、なおさらです。  相続手続の期限を目安に話し合いのスケジュールを立て、予定していた日までに話し合いがまとまる見込みが無くなったら速やかに専門家に相談するなり、家庭裁判所に調停の申立をおこないましょう。  その時までには、一度、弁護士に相談しておくことをお勧めします。相談の上、依頼するとなったら、話の噛み合わない共同相続人を相手に話をするストレスからも解放されますし、事務手続などに必要な時間の束縛からも自由になれます。

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