遺産相続に必要な遺産分割協議書!作成ポイントとは?

ホーム > コラム > 遺産相続に必要な遺産分割協議書!作成ポイントとは?

更新日:2021年10月26日

目次

遺産相続に必要な遺産分割協議書!作成ポイントとは?

 家族が亡くなると相続が発生し、有効な遺言書によって遺産の相続の仕方が明確に指定されている場合を除いては、相続人全員で遺産分割協議遺産をおこなうことになります(遺産分割協議について、詳しくはコラム「遺産相続で必ず行う遺産分割協議では一体どんな話し合いを行うのか?」をご参照ください)。そして、この遺産分割協議の結果にしたがって、遺産分割に必要な相続手続をおこなうことになります。このとき必要になるのが、遺産分割協議で決めたことに相続人全員が合意したことを証する遺産分割協議書です。ここでは、遺産分割協議書を自分で作成する際のポイントをお伝えします。

遺産分割協議書とその法的効力は?

 遺産分割協議書とは、遺産の分割の仕方について相続人全員で話し合った遺産分割協議において取り決めた内容を書面にまとめ、相続人全員で署名押印をしたものです。したがって、相続人の誰が何を相続したかを相続人の間で明確にできるだけでなく、第三者へ主張することできる効果を持っています。しかし、故人の借金(マイナスの財産)について、相続人の間で誰が返済していくのか(債務の帰属)を決めたとしても、これを債権者へ主張することはできません。債権者は、遺産分割協議(この場合、借金の返済方法についての話し合い)に参加していないので、この時の取り決めが債権者に対して効力を持たないのです。
 たとえ相続人全員が遺産相続の取り決めに合意したとしても、遺産分割協議書が作成されていなけれれば、その後おこなうことになる遺産の名義変更に必要な種々の手続を行うことができません。遺産分割協議書は、遺産分割協議の内容を証明する書面となります。

相続手続を進める大事な書類

 遺産分割協議書は、遺言書が無い場合に相続手続を進めていく際には必要不可欠な書類です。例えば、不動産相続登記を行う、預貯金の払い戻しを受けるなど、相続手続を進める際に遺産分割協議書を要求される場面は多々あります。遺産分割協議書が無く、遺産の所有権移転手続ができないまま次の相続が発生してしまうと、先次に起こった相続の相続人までもが当該遺産の権利者となり、権利者の数がネズミ算的に増えていくこともあります。

遺産協議書作成の2つの目的とは?

 遺産分割協議書には法的効力があるのは先述の通りですが、ここでは、遺産分割協議書が果たすその他の目的について2つほど説明します。
 その目的の1つ目は、後に起こり得る遺産分割トラブルの防止です。遺産分割協議によって相続人の間で一定の合意を見るまでに時間を要することもあります。その様な場合に往々にして起こるのは、しばらく時間をおくと相続人の考えが変わってしまう、ということです。相続人の数が多い、相続手続に非協力的な相続人がいる、といった場合にはなおさらです。遺産分割協議書を完成させるところまでいけていないと、後に相続人の中の誰かが「そんな内容には合意していない」などといって、合意したはずの内容を覆す可能性もなきにしも非ずです。この様な事態を避ける為に、遺産分割協議での合意内容は書面にして残す、すなわち遺産分割協議書を作成して権利関係を確定すべきなのです。
 2つ目の目的は、遺産分割協議の内容を正確に記録するためです。遺産の全てを特定の相続人が全て相続する、といったような内容であれば、どの遺産がどの相続人に相続されるのか解らなくなることも無いですが、相続人が複数いて、複数の不動産、預貯金、株券、車など、遺産の内容が多岐に渡る場合には備忘録が必要になってきます。相続財産毎に順に相続手続をおこなっているとある程度の日数も要します。その間に、誰が何をどれだけ相続するのかが、あやふやになるようでは困るのです。そこで、遺産分割協議で得た結論を法的効力のある形で記録しておくのが遺産分割協議書です。またこの記録は、今回の相続が夫婦の一報が亡くなった一次相続である場合、残された配偶者が亡くなる二次相続の時に参照できる資料となり得ます。

遺産分割協議書作成のポイント!

 実は遺産分割協議書は、法律的に重要な書類であるにもかかわらず、法律で定められた書式がありません。しかし、せっかく作成しても先述のような法的効力を持たないものであったり、目的を果たせないものであったりしては作成する意味がありません。ここでは遺産分割協議書を作成する上で注意しなければならないポイントについて説明します。

遺産分割協議書に必要な記載事項と記載する上での注意点

 遺産分割協議書には法定の様式はありませんが、相続手続において遺言書に代わる書類であることを考えると、記載すべき事項については後の手続で要求される内容を十分勘案して作成する必要があります。
 最低限必要なのは次の4つです。

 ①故人(被相続人)の氏名、本籍地、最後の住所地と生年月日と死亡日
 ②相続人全員が遺産分割内容に合意していること
 ③相続財産を特定するに足る具体的な内容とそれぞれを相続する人が誰か
 ④日付と各相続人全員による氏名・住所の自署と実印の押印

誰の遺産に対する遺産分割協議書であるのか

 これから示す遺産分割の内容がいつ始まった誰の相続のものかを明らかにするため、被相続人(故人)を特定できる情報として、氏名、本籍、最後の住所地、生年月日と死亡年月日を表示します。

相続人全員で話し合いをおこなった結果であること

 遺産分割協議は、相続人全員でおこない、全員が同意したことをもって終了できるので、複数いる相続人の1人から同意が得られなかっただけでも遺産協議書の法的効力は無効になります。したがって、これから示す遺産分割の内容が相続人全員での協議の結果、相続人全員が同意したものであることを示すために、このことを記しておきます。

遺産を特定できるよう記載しておく

 相続人の誰が、どの遺産を、どの程度取得するのか、について記載します。この際、それぞれの遺産にはこれを特定できるだけの十分な情報が必要になります。例えば、「相続人〇〇は故人の自宅を相続する」といった記載では、相続人の間では共通の理解があっても、第三者的にはどの不動産を指しているのか不明瞭です。このように不動産について記載する際は、登記簿謄本に記載されている情報をそっくりそのまま明記しておけば、後に不要なトラブルを避けることができます。これと同様に、自動車であれば車検証記載通り記載します。また、銀行口座の様なものでは銀行名・支店名・口座番号と金額を正確に記載します。
 そして、それぞれの遺産について誰がどれくらいの割合で相続するのかを明記します。

遺産の分割方法

 遺産の形を変えることなく分割できるのであれば、「どの遺産を誰に」という指定の仕方で足りるのですが、例えば、遺産を相続人の間で等分に分割しようとしているのに、金融資産の割に不動産価格が大きすぎて等分割できない、といった場合、「どうやって」という分割の方法に言及しておく必要が出てきます。先の例でいくと、不動産を取得する人が他の相続人に代金をいくら支払う、といったことです。
 遺産分割の方法について詳しくはコラム「遺産相続で把握しておきたいポイント!遺産相続の方法と種類について知ろう!」をご参照下さい。

署名は自署、押印は実印

 前述の通り、遺産分割協議書には法律に定められた要式はありませんが、これを用いて行うことになる相続税申告、相続登記、銀行口座の名義変更などの手続では多くの場合、自署と実印の押印および印鑑証明書の提出が求められています。遺産分割協議書は相続人全員の同意が必要であることから、当該遺産分割協議書に押印した者が相続人本人であることを証明するためにも自署と実印の押印が望ましいと言えます。海外在住の相続人の場合、印鑑証明書に代えて、日本領事館等の在外公館に出向いて遺産分割協議書に相続人が署名した旨の証明(サイン証明)を取得し、遺産分割協議書に添付します。

その他、記載しておくと良いこと

 必要不可欠ではないですが、後のトラブルに備える意味で記載しておくと良いのが次の2つです。

 ⑤清算条項
 ⑥協議後に判明した遺産の帰属先に関する事項

相続人の間で権利義務関係が他に存在しない旨

 後日、遺産分割に関わるもめ事を再燃させないために、遺産に関して遺産分割協議書で取り決めた以外の権利義務(お金のやり取りの必要など)が相続人の間に存在しないことを示すために記載しておくのが清算条項です。例えば、不動産が遺産にあり、遺産分割協議書を作成した段階では相続人の間で納得いく形で分割できたのだが、後日、不動産を取得した相続人が不動産を売却したときに得られた代金が、遺産分割協議書を作成した当時の不動産の評価額と大きくかけ離れていた様な場合にも、相続人の間でこの差分を清算する必要は無い、というものです。この様に、後から露見した不均衡だけでなく、この他、そもそも遺産分割協議書作成の段階で存在した相続人の間の不均衡について、これを後から主張することができないことの言質の役割を果たすのが清算条項です。本来、遺産分割協議書はここに記載された分割方法を相続人全員が納得した上で作成したはずなので、清算条項を記載するまでもなく、後から意義を唱えられるものではありませんが、揉めた挙げ句にようやくこぎ着けた遺産分割協議書であれば、念のため清算条項で後日意義を唱えられないことを明文化しておくというのも一法です。

遺産分割協議書作成後に発見された遺産の分割について

遺産分割協議は開始前に相続財産調査をして遺産の範囲を確定してから始めますが、それでも後になって見つかる遺産が無いでもありません。この後から発見された遺産の存否が既に決着済みの遺産分割協議に影響を及ぼすほど重要な遺産である場合には、先の遺産分割協議が無効になることもあります。発見された遺産が重要であるかどうか、すなわち、先の遺産分割協議を無効にするかどうかの判断が相続人の間で争いになるのを避けるために記載しておくのが、協議後に判明した遺産の帰属先に関する事項です。この事項の記載内容は大きく2つ考えられ、一つは発見された遺産につき別途協議するというもの、もう一つは予めその遺産を取得する者を決めておき「本書に記載なき遺産および後日存在が明らかになった遺産は全て〇〇が取得する。」という様に記載します。

いつまでに遺産分割協議書を作成するか

遺産分割協議書の作成自体に期限はありません。しかし、相続税の申告の際、分割が完了したうえで申告できれば分割完了後の申告をせずに済みますので、相続税の申告期限である相続開始から10カ月に向けて協議書を完成させると良いでしょう。
 なお、負債が多いなど相続税の申告が不要な場合でも相続放棄や限定承認などの期限は意識しておいた方がよいでしょう。期限が相続の発生から3カ月以内となっているので、それまでには相続人が相続の方針について話し合っておく必要があります。限定承認について詳しくはコラム「遺産相続で把握しておきたいポイント!遺産相続の方法と種類について知ろう!」をご参照下さい。
相続が発生してから1年の間には、故人を偲んで親戚が集まる機会もありますが、それを過ぎると多くの場合、そういった機会は格段に減ります。遺産分割協議は時間をかけることで何かしら大きな成果が得られる様なことでもありませんし、その間に滞ったり、暫定的に都度対処したりしなければならない故人名義の支払いなどといった手間を考えると、期限の無いこととはいえ、親族が集まる機会のある最初の1年程度で終わらせ、その後、速やかに遺産分割協議書を作成してしまうことをお勧めします。

遺産分割協議書は何部作成すれば良いのか

遺産分割協議書は相続人全員の署名と実印による押印が必要な書類です。原本の提出を求められる手続も多くあり、やむなく原本確認のため郵送することもあるかもしれません。相続人それぞれが1部持つのが通常ですが、事情によっては手続き用に多めに作成することも一案かもしれません。相続人の間で了解があれば、誰かが原本を1部保管して、残りの相続人はコピーを保管するといったことも可能でしょうが、相続人全員の同意をもって作成した書類なのですから、全員が原本を保管するとした方が良いでしょう。
また、作成に当たっては、内容を紙1枚に納めるようにすると、複数枚に渡った時にページの継ぎ目に必要となる契印を押す手間が省けます。

遺産分割協議書作成は専門家依頼がお勧め!

遺産分割協議書は法律で要式の定められていない文書ですが、前述の様にその後の手続で必要となる重要な書類です。その目的に適うだけの要件を備えられなければせっかく作成しても機能しないものになってしまいます。また、遺産分割協議が難航の末、決着を見た様な場合では、その内容を書面にまとめている間に迷いも生じかねませんし、作成を任された相続人には精神的負担も生じます。しかも、分割方法が複雑である場合は特に、記載内容に高度な正確性を求められます。遺産分割協議書を相続人の誰かが作成する際のこういった難点を払拭するためには、遺産分割協議書の作成を専門家に依頼することをお勧めします。

まとめ

遺産分割協議書は、故人が残した遺言書が無い場合、また、遺言書があってもそれが無効であったり、相続人全員が遺言書とは異なる分割を望んだりした場合に、相続手続をおこなうために必要になる書類です。作成に当たっては、相続人全員で遺産分割協議をおこないます。遺産分割協議書には法律で決められた要式はありませんが、後の手続を円滑に進め、相続人の間で遺恨を残さないで済む様、記載内容には不足が無い様、また、その正確さにも十分注意を払いましょう。記載内容や記載方法について、疑問を感じたり、自信が持てなかったりした場合は迷わず専門家に相談しましょう。

ご相談のご予約はこちら

ご相談予約専用ダイヤル

0120-7834-09

受付時間
 平日|9:00〜18:00 土曜|10:00〜17:00

WEB予約フォーム

▲ TOP